ピロートークをご一緒に(夜の静寂(しじま)を切り裂く言の葉)
歯医者で診察待ちをしていた時。
児童スペースに、ハイハイしている赤ん坊がいた。
服装から、おそらくは女の子。
この子は20年後にまた同じポーズをとるんだなぁと、
微笑ましく思った穏やかな午後のひと時。
ふと気になった。
あの時。
俺があの時と表現する時は、80%の確率でセックスを指しているんですけど、
やだすっごいこんなの初めて、幸子壊れちゃう!
という表現を、リアル女子はするの?
もし、するのであれば、実際にあったキラキラネームである、
泡姫(ありえる)ちゃんや、
金星(まぁず)ちゃんがそんな風に叫んだ時、
真っ最中の彼氏は、果たして硬度と角度を維持し続けられるのか?
彼女達の20年後が心配でならない。
特に、まぁずちゃん。
マーズは火星だから。
まぁずちゃんを女の子と決めつけちゃってるけど、まさか男の子じゃないよね?
ちなみに。
男の子代表の俺は、同様のセリフを吐息交じりに発したところ、
『ちょっと、それ止めて。集中できない』
と、迷惑がられた事がある。
残念でならない。
あたしもさ、ながく生きてきて色んな経験してきたからさ、とか言いながら、
遠い昔のまぐわいを思い出した。
それは、今より10kg以上痩せていた頃の事。
とある殿方に性的に抱きしめられながら「いいよー、この身体、好きだよー」と、言われた本人が引くほど絶賛された。
そりゃ、何かの間違いだ。
お前の目は節穴か? と。
自分でも冷静にツッこんだよね、心の中で。
回答に困って、つい「あふん!」って言ったんですけどね。
あふん!って万能。
まぁ、蓼食う虫も好き好き。
色んな好みがあってもいいわいな、とその時は思っておった。
それ以降も、何度か抱きしめられていたという事実が、どっかで自分を安心させていたんだと思う。
が。
何度か目で、ふと気づく。
あれ?顔は?
そういや、俺の顔の事は一言も褒めてくれた事がないぞ?
きぃぃぃぃっ!あたしの身体が目当てだったのね!
まさか俺がこのセリフを言う日がくるなんて、思ってもみなかったわー。
言わなかったけど。
言いたかったけど。
恐らくは本心、というか100%純粋な善意で褒めてくださったんだろうけど、
それが「じゃ、顔は?」にそのまま跳ね返り、歓喜と失意がない交ぜになった、訳のわからんまぐわいになったような気がする。
こうした経験を積んで、大人になっていくのね?
一般的な大人の階段の上り方ではない事は、重々承知しているけれど。
そして、充分大人になった、今だからこそ言える。
てめぇ、こらちょっと表ぇ出ろっ!